今季もたいした積雪のないまま年明けを迎えた。これから我々はどこの山へ向かったものか、そして今後の降雪に期待しても良いものか、そんなことばかりに頭が支配される毎日。軽量高性能なビンディングがつき、先端がいくらか尖って上に反った板を履いたはいいものの、またも藪との戯れに終始する日々となるのだろうか。
雪が少ないことは否が応でも実感されるものの、客観的に見るとどうか。
まず分かりやすいのがアメダスデータ。積雪深をアメダス観測所ごとにプロットしたものを日本気象協会のtenki.jpで確認できる。
局所的ではあるがより詳細なデータとしては、我らが(いくつかの意味で)森林総研十日町試験地の積雪情報が貴重な情報を提供する。
現況把握としてはまず、積雪深の今年、昨年、平年の値が示される。3者を比較するだけで現在の積雪状況がどういった位置づけなのかおおよそ把握できる。
十日町試験地サイトの特筆すべき点として、1916-1917年からの長期にわたる積雪データが公開されていることが挙げられる。
過去100年近いデータを見るに、最大積雪深が1m前後の年が随分と以前から度々あったことが分かる。同時に、近年になるにつれて積雪が減少傾向にあるようにも見えるが、そこはまだなんとも言えないところである。里での寡雪が山での小雪と直結していたのか、今となってはなかなか知るすべもない。少なくとも、年明けか遅くとも1月中旬までにそれなりの雪が来ないことには、その年の積雪がたいしたものにならないことは確かな傾向のようである。
里よりも山の雪の状況が知りたい。アメダスの観測所ではなく、もう少し山に近いところの積雪を知るにはスキー場の積雪量が有効だろう。といったところではweathernewsのスキー場の天気が価値ある情報を提供している。
スキー場における現在の積雪深とともに、直近1週間の積雪の推移が示されており、山での雪の増減とヤブの埋まり具合に想像を巡らすことができる。併記される週間天気予報では標高などが考慮されているためか、平地の予報が雨であってもスキー場では降雪であることも多い。里の雨にうんざりすることも多い昨今だが、山ではそうでもないことを示している。ヤブを抜ければ深いラッセルの快感が待っているに違いない、かもしれない。
もう少し詳しく現況の積雪を知りたい。こうした寡雪の状況下にあっては、できればどこに雪があってどこでは少ないのかを知りたい。そういう時に役立つかもしれないのが準リアルタイム積雪深分布(新潟大学災害・復興科学研究所)。
全国約2000地点の観測箇所のデータより積雪分布図が作成されているが、新潟大学が開発しているためやはりと言うべきか、新潟県が豪雪地帯だからと言うべきか、新潟県では観測点の密度が高くより高精度のデータが得られていると思われる。
もちろん山岳地帯での取得データはわずかかほぼ皆無であろうし、地点間のデータ補完にも標高や地形などが考慮されているのかは不明。単純にGISで内挿しているだけかもしれない。だが現在ネット上で得られる積雪情報としては最も詳細かつ高精度のものと思われる。過去のデータとしては2012年頃からとまだまだ新しいが、積雪深の前日比や前年比なども確認できる。さらに2016年12月31日より、1時間毎のデータが公開されることとなったらしい。観測地点ごとのデータ更新の頻度の違いという問題もあるかもしれないが、直近の積雪変化を知ることができるのは、雪山登山のリスク把握にも活用できるだろう。
下は先日巻機山に登った12月18日の過去5年間の積雪分布を比較したもの。異常な小雪だった昨季よりはいくらか雪があったものの、それ以前と比べると今季も雪がないことは明らか。
今季はとにかく暖かくて雪が降らないが、大晦日時点のデータでは12月18日時点よりも積雪が減じ、昨季にも増して雪がないことが分かる。
以下、データのある過去数年の積雪を比較してみる。
1月末時点を見ると、やはり昨季の寡雪が顕著。
2月末時点のデータを見ると、いずれの年も1月末時点よりいくらか増えているものの傾向としては大差ないように見える。とにかく1月に降らないことにはもはや挽回が難しいことが伺える。
3月末になると積雪がかなり減少することが分かる。実感として山ではそれほど減っていない気もするのだがそうでもないのだろう。何より昨季の雪の少なさは言葉にならない。今年はいったいどうなるのか・・・。
雪が降るのか降らないのか、天気予報を見ては一喜一憂、あるいは零喜三憂する日々が続くが、結局のところ予報は予報以上のものではないというのがあらためて実感されるところ。当初、今季は平年並み以上の雪が予測されていたが、実際ふたを開けてみると昨季以上のたつけなしの暖冬小雪傾向。それでも予報の確認をやめられないのは、これからの盛り返しを期待してしまう根拠のない希望ゆえんだろう。
そうした時にまず確認するのが気象庁の季節予報。この先1ヶ月・3ヶ月の平均気温や降雪量などの予報が、平年値との比較として毎週木曜日に更新される(詳細)。今季も秋頃の予報では平年並みかやや寒く雪が多くなるとのことだったが、日が経つにつれ暖冬小雪傾向に推移。分布図の色合いが寒色系(寒く雪多い)から暖色系(暖かく雪少ない)に変わっていくのを見るのは、哀しいというか情けないというか不甲斐ないというか、ともかくやりきれないものがあった。
そもそも平年値と言っても、10年毎に更新される値であって、その都度過去30年の平均値のようなものとして算出される。つまるところ、長期的に昇温傾向、小雪傾向にあれば平年値も徐々に高温小雪となるわけで、長い目で見れば昨季や今季のような冬が平年並みとなる可能性もある。
今で言う越後の地に縄文文化が栄えたのは、そうした雪の少ない気候下においてだったのかもしれない、というところまで考えてしまう近年の雪のなさである。
それでも天気の傾向を確認するに越したことはない。降雪状況もそうだが、山行日付近の天候は把握しておきたい。短期予報については精度も高いと思われ、時系列的に分かりやすいのがGPV気象予報。詳細な天候の分布が視覚的に予測できるため、天気図とともに基本的な確認事項となりつつある。
降雪やその他天候を予測するには天気図の読図が基本となるが、天気図の見方をわかりやすく解説し、かつ登山者としての着目点にも重点を置いてくれるのが、気象予報士Kasayanのお天気放談。地上天気図、高層天気図、各種専門的図を駆使、さらに着色・注記等を施すことでとても親切で天気図の読み方の勉強にも最適。
とりわけ冬季においては北半球全体を視野に入れた寒気の動向と気圧配置を併記したコメントは降雪予測にも非常に参考になる。それはつまり、現時点より先しばらくは顕著な降雪がないことを示してもいるのだが・・・。
昨季においてはそもそも寒気の南下が少ない上に、それと西高東低の冬型が一致することもわずかだった。一度なかなかの寒波と冬型が同期する予報となり、起死回生の降雪が期待された。しかし日本海に低気圧が発生していしまい冬型が半端なものとなり、降雪も大したことはなかった。・・・という因果関係もこちらの解説からよくよく読み取れた。
とりわけ冬季においては北半球全体を視野に入れた寒気の動向と気圧配置を併記したコメントは降雪予測にも非常に参考になる。それはつまり、現時点より先しばらくは顕著な降雪がないことを示してもいるのだが・・・。
昨季においてはそもそも寒気の南下が少ない上に、それと西高東低の冬型が一致することもわずかだった。一度なかなかの寒波と冬型が同期する予報となり、起死回生の降雪が期待された。しかし日本海に低気圧が発生していしまい冬型が半端なものとなり、降雪も大したことはなかった。・・・という因果関係もこちらの解説からよくよく読み取れた。
予報ばかり見て一喜一憂しても仕方がないとは分かりつつも、人は諦めよりも希望の方に数倍程度は重きを置いてしまうらしい。ということでさらに視覚的に分かりやすい気象情報があると、それに注視してしまう。Windytv。風向・風速がアニメーションで示されるとともに、気温・雲量・降水量などを重ねて表示できる。当然ながら予報精度は先に行くほど落ちるものの、9日程度先までの計算値を見られる。これを見れば気圧配置、つまりは天気図も見えてくる。天気図を見ても同じかもしれないが、見た目の分かりやすさという点ではやはり新しい技術に分があるかもしれない。
大陸からの北西の風がびゅうびゅうと吹き、列島の気温が下がる時が我々の冬である。そんな予報を見るとわなわなしてくるのだが、やはり今季もそうした絵柄を目にすることは少ない。そう言えば昨季からして、関東においても冷たい北風が吹くことがほとんどなかった。風が吹けば桶屋が儲かるではないが、風が吹かないことには雪国の日々も活性化しないと言えるだろうか。
大陸からの北西の風がびゅうびゅうと吹き、列島の気温が下がる時が我々の冬である。そんな予報を見るとわなわなしてくるのだが、やはり今季もそうした絵柄を目にすることは少ない。そう言えば昨季からして、関東においても冷たい北風が吹くことがほとんどなかった。風が吹けば桶屋が儲かるではないが、風が吹かないことには雪国の日々も活性化しないと言えるだろうか。
新年早々なにを書いているのかという記事。雪さえあれば気象情報とにらめっこすることもなく、このような内容を書くこともなかったはず。暖冬故の産物か。だがまあ天気ばかりは自然まかせ。
これからはヤブに負けない頑丈なジャケットが主流になる、と予測してみる。
すごい読み応えのある記事でした。
返信削除バンバン山スキーの記事が書ける降雪・休みが欲しいところですね。
お疲れさまでしたm(__)m